事業承継対策における留意点をお伝えします

はじめに

事業承継対策は株式の承継だけが課題ではありません。経営者にも家族があり、個人としての相続も一緒に考える必要があります。

それに、財産を承継できても、経営者としての理念や哲学を継承しなければ組織としての継続が難しくなることも想定されます。

法人資産の承継
個人資産の承継
理念、信念の承継

この3点で相続・承継対策を検討していきましょう。

本コラムは、セミナーで使用したレジュメを元に作成しているため、一部箇条書きになっていること、ご容赦ください。

事業承継対策における留意点

1 株式を後継者に贈与してはいけない

後継者へ株式を贈与した場合、特別受益と言っていわば相続財産の前渡しのような判定を受けることになり、他の相続人と分割協議する際に、分割対象財産として持ち戻しされて計算されてしまう。

この際の株式評価額は贈与した時点ではなく、相続が発生した時点の評価となる。

簡単に言うと、良かれと思って後継者に株式を贈与したせいで、余計な分割争いを招く結果になってしまう恐れがある。

2 事業承継税制使っても結局猶予しただけになりやすい

事業承継税制を利用するなら、令和6年3月までに計画を提出しないといけない。

顧問税理士が申請を促していない場合、税理士賠償の対象になるのではないか、という議論がある。

いざ制度を利用したとしても

  • 5年間後継者が代表であり続けること
  • 後継者が株式を保有し続けること
  • 従業員数の雇用を8割キープする

これらの条件を守れなかった場合、猶予されていた納税額を一括納付することになる。

業績悪化などのやむを得ない理由であれば、事情次第で勘案される場合もあるが絶対ではない。
猶予された納税金額が免除になるのは、後継者が死亡したときである。

そのため、おそらくはいつの日か猶予されていた税額を一括納付となる可能性があるので、あくまで払えるようになるまでの準備期間を延長する制度と考えておいた方が良いかもしれない。

3 個人納税資金不足で内部留保が枯渇する

自社株承継対策を打たずに現経営者が死亡した場合、後継者が高額な納税資金を支払うことになる。

個人資産で十分な納税資金が確保できなかった場合、会社から貸付を受けて納税するか、自社株買(金庫株化)する手段もあるが、法人資金が流出することになり、納税資金が不足するもしくは、会社の流動資金が枯渇することになる恐れがある。

相続発生時には自社株買いを行えるだけの流動資金を確保できる生命保険などを準備しておく必要がある。

4 少数株主、親族分散

親族全体に株式が分散していると経営権が集中できずに経営上の意思決定ができなくなる恐れがある。

また、少数株主を取りまとめて会社乗っ取りを行う手法も存在するため分散している株式は、相続発生前に定款変更や資金準備を行い買取に向けた準備をしておく必要がある。

5 社長の認知症で会社倒産

筆頭株主である現経営者が認知症などで意思能力を喪失した場合、議決権が停止する。

この場合、会社のルーティン業務の遂行はできるが、株主総会案件(定款変更、役員選任等)ができなくなる。

ないしは、一部株式が別の人に保有されている場合、議決権が停止された株式以外の株式のみを有効として、議決権を行使することができるようになるケースもあるため、社長が認知症になり次第、専務が会社を乗っ取るなどの行為も理論上はできる可能性がある。

6 組織再編と種類株式

株式の承継には株式贈与、譲渡以外にもホールディングス化や株式交換などの手法で承継対策をする手段も存在する。

また、種類株式という議決権がない株式を発行する等の方法で、前述のリスクに対抗する方法もある。

7 退職金準備の保険

損金計上の生命保険は実質骨抜きになってしまったが、福利厚生目的の養老保険で半分損金は可能。

しかし、10年満期の養老保険で契約をしているケースが散見されるが、10年ごとに節税効果が失われるため、意味がなくなってしまう。

養老保険の満期設定は退職時期に合わせなければならない。

8 死亡退職金 弔慰金の活用

経営者は死亡退職金非課税枠と死亡弔慰金非課税枠という特例が利用できる。

生命保険の加入と連動させて、規定の整備ことにより、可変的に受取人を指定することができる。

9 後継者以外の相続人の不満を考慮する

後継者を1人に絞り、自社株を承継するとほとんどの場合、不平等な財産分割となる。

他の相続人が不満感情を持ち、相続分を主張してくることも多々あり、円滑な事業承継は破綻して、さらには家族の仲が裂かれる事態にも発展しうる。

事業承継においては、十分な代償交付金の資金準備を行なっておく必要がある。

10 法人死亡保険金の請求は代表取締役のみ

個人の相続が順調に完了しないと法人保険の請求もできない。

相続対策のポイント
3つの対策「分割」、「納税」、「節税」

分割
相続人間の不平等を調整するための代償交付金準備
納税
自社株や不動産など換価しにくい上に高額になりやすい財産の納税資金準備
節税
生前贈与、自社株評価引き下げを利用して財産圧縮と資金レバレッジ効果

事業承継における生命保険活用

1 法人で経営者の死亡保険金準備

納税資金準備(自社株買い、死亡退職金、弔慰金、)

2 個人で経営者の死亡保険金準備

分割時の代償交付金準備
納税資金準備(自社株の納税)
遺族の生活費保障

3 生前贈与した現金で一時所得契約

契約者:後継者
被保険者:現経営者
受取人:後継者

4 個人で既存加入の死亡保険受取人変更

配偶者から子供に変更

事業承継対策のプロセス

1 経営者の理念や信念を言語化

株式の承継対策
その他相続財産の分割、納税対策

2 生命保険で各種資金準備
3 遺言書の検討
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