官公署の本庁と出先の関係、書類を提出するときのポイントは?

こんにちは。行政書士の菅拓哉です。

「事件は会議室で起きているんじゃない!現場で起きているんだ!」というのは、「踊る大捜査線」の名セリフです。

警視庁湾岸署刑事課強行犯係係長の青島俊作が警察庁長官官房審議官の室井慎次に投げかけたこの言葉ですが、厳密には、湾岸署は東京都の都道府県警察である警視庁の出先機関、警察庁は国家公安委員会の特別機関であり、本庁と出先という関係ではなく、国と都道府県という関係です。

ただ、雰囲気や立場はよく似たものがあります。

今回のコラムでは官公署の本庁と出先の関係性を詳しくご紹介するとともに、関係するときに注意したい点をお伝えします。

本庁と出先機関の関係性~都道府県を例に~

官公署の中でも、本庁と出先機関がハッキリ分かれるのは、都道府県庁ではないでしょうか。

国の場合は、本省と地方機関という関係がありますが、国の地方機関は直接的に国民や現場の事業者と接するというよりも、都道府県等の行政機関の指導監督という側面が強くあります。

また、市町村はそもそも出先機関がなく、小規模な自治体では本庁で全ての事務を行っているところもあります。

都道府県は、保健福祉・農業・土木といった事業系の部署で、出先機関が設けられることが多く、管轄する地域の住民や事業者からの許認可や補助金の申請を受け付けています。

併せて、出先機関の職員は、実際に現場での立入検査や指導監督業務を行っています。特殊な例では、農業試験場のように試験研究を行っている出先機関もあります。

一方、本庁は予算編成や事業の企画立案を行うとともに議会対応や出先機関の指導監督に加え、出先機関から「進達」された文書を審査し、許認可や補助金の交付決定を行っています。

また、自然災害や突発的な事故が発生した時は、本庁に災害対策本部が設置され、出先機関に現地対策本部が設置されます。このような時、冒頭にご紹介した「踊る大捜査線」のようなやりとりが、本庁と出先機関で繰り広げられがちです。

出先機関へ来庁するときに注意したいこと

出先機関の職員は、いわば現場のプロフェッショナルです。

許認可や補助事業の要件に熟知しているだけでなく、薬剤師、保健師、獣医師、土木技師といった技術的なバックグラウンドを持った職員が在籍しています。

ですから、「どうせ分からないだろう」といった気持ちで実情と異なる申請書を提出しても、すぐ本質を見破られてしまいます。

一方で、技術的な疑問点や質問点があれば、遠慮なく相談すると、職員も技術のプロとして喜んで助言してくれることでしょう。

ただ、許認可や補助事業における例外的処理については対応が難しいことがあります。

都道府県内で統一した見解を出す必要がありますし、場合によっては国に照会することもあります。

このような場合には、出先機関から本庁に照会が行われることとなり、回答が得られるまでに時間を要することがあります。

また、事務決裁規程上、出先機関では受理と形式的な審査のみを行い、内容の審査と行政処分は本庁で行うという案件もあります。

このような場合も、出先機関から本庁へ「進達」する手続きに加え、本庁での審査等が行われ、再度、出先機関に「申達」されるという経路を通るため、かなり時間を要することになります。

本庁へ来庁するときに注意したいこと

多くの許認可案件や補助事業は出先機関を最初の窓口としていますが、特に重要な政策事項や稀な案件については、本庁直轄とされることがあり、時には都道府県庁に来庁する機会もあることでしょう。

まず、本庁に来庁するときは、フォーマルな服装で行くことをおすすめします。

出先機関では貸与された作業着で勤務する職員が多く在籍する傾向にありますが、本庁ではスーツで仕事をしている職員が多い環境です。

あまりにもラフな服装では周囲から浮いてしまいますし、「見た目」で損をしてしまうことは避けたいところです。

次に、できるだけ事前に来庁の予約を取るとともに、要件を手短に済ませられるよう事前準備を入念に行いましょう。

ある都道府県庁の人事課の公表資料では、平均的な本庁職員は出先機関職員の約2倍の残業時間を要しているとされています。

霞が関ほどではないにせよ、総じて本庁の職員は忙しく、時期によっては分単位でスケジュールが組まれていることもあります。

心証をよくするという観点からも、留意したいところです。

蛇足ではありますが、本庁と出先機関では同じ役職名でも全く異なる方がいます。

その代表例が「課長」であり、出先機関と本庁の課長では雲泥の差があります。

出先機関の「課長」は本庁では「課長補佐」という役職に相当することが多く、出先機関の課長は裁量の広さや権限がかなり限定されている傾向にあります。

一方で、本庁の「課長」は、出先機関の「所長」を束ねるとともに、数十人在籍する課のトップであることが多く、都道府県議会の委員会で答弁を行うとともに、本庁直轄の許認可や補助金の交付決定の最終決定権者となる傾向にあります。

ですから、担当者で埒が空かないと思って、「課長を出せ」と言っても出先機関のように課長が出て来ることは稀と思った方がよいでしょう。

なお、本庁の担当者は、出先機関の担当者を束ねる役割を担っていることが多く、裁量の範囲も広い傾向にありますから、困った時は粘り強く担当者と交渉するか、上司である「課長補佐」の同席を求めるとよいでしょう。

まとめ

今回のコラムでは、都道府県を例に、本庁と出先機関の関係性や来庁時に注意したいことをご紹介しました。

もちろん、住民にとって本庁も出先機関も、同じ自治体の組織には違いありませんし、過度に遠慮する必要もありません。

一方で、手続きを円滑に進めるという実用的な面では、それぞれの違いを知って、TPOに合わせた行動をとることも処世術の一つではないかと思います。

行政書士は皆様の課題を解決するべく、官公署それぞれの特徴に合わせて、書類の作成及び代理を行うプロフェッショナルです。

役所への許認可や補助金申請に関するお困りごとがありましたら、東京深川行政書士事務所まで、お気軽にご相談ください。

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