近年、店頭に「20%引き」「半額」と大きくアピールする小売店が増えてきたように思います。お店のスタッフに聞いてみると、定価ではなく、割引価格で取引する件数の方が、多いとのことでした。
チラシ、クーポン、割引デー、曜日セール、DMと絶え間なく割引が続き、むしろ定価で取引している日は殆ど無いのではないかと思うこともあります。
どうしてこんなにも割引表記が多くなったのでしょうか。それは、お店にとって、手っ取り早く売上を上げるのはセールだからです。
しかし、セールは諸刃の剣でもあります。セールを連発すると、そこから抜け出せなくなってしまうからです。顧客はどうせまた割引になると思っているので、定価での取引が殆どなくなる可能性があります。
セールが続くと、景品表示法違反になり得る
店頭に「セール」と表示し、実際に様々なキャンペーンを行い、定価よりも割引で受け付けることが多いような場合には、景品表示法に抵触する可能性があります。
顧客にとっては、年中セールをしている場合、セール時の価格の方がむしろ「定価」であり、定価より割引としながら、割引した価格の価値しかないサービスだったことになります。また、小売店にとっても、薄利多売で営業を繰り返すことになり、ただ忙しくなるばかりです。
有利誤認表示に該当するケース
自社が販売する同一商品の過去の販売価格を比較対照価格として記載する場合、過去の販売価格の内容について正確に表示しない限り、有利誤認表示に該当する可能性があります。たとえば、「通常販売価格:2,000円 セール期間中価格:1, 000円」とのみ記載されている場合、通常販売価格で販売されていた期間が不明です。
「通常販売価格」「当店通常価格」などとして記載された比較対照価格が、以下のような場合は、有利誤認表示に該当する可能性があります。
- 比較対照価格での販売実績がない場合
- 最近相当期間にわたり販売された価格ではない場合
「最近相当期間にわたり販売された価格」であるか否かは、当該価格で販売されていた時期及び期間、対象となっている商品の一般的価格変動の状況、当該店舗における販売形態等の事情を総合的に判断されます。
一般的には、セール開始時期から遡る8週間のうち過半の期間、比較対照価格で販売されていた実績が必要とされており、「8週間ルール」と呼ばれています。
例えば、「通常販売価格」として記載されている価格で販売されたのがセール開始時期から遡る8週間のうち最初の2週間のみで、その後6週間がセール価格であった場合、有利誤認表示に該当する可能性があります。
景品表示法違反行為を行った場合
景品表示法に違反する行為に対しては、措置命令などの措置がとられます。景品表示法に違反する表示があると疑いが有った場合、消費者庁は資料収集、事情聴取などの調査を実施します。
その結果、違反行為が認められた場合は、今後同様の違反行為を行わないことなどを命ずる「措置命令」を行います。違反の事実が認められない場合であっても、違反のおそれのある行為がみられた場合は、指導の措置がとられます。
また、事業者が不当表示をする行為をした場合、法令等の定めに従って課徴金の納付を命じられることがあります。
まとめ
営業戦略がないセールは、長期目線で自身の首を絞める可能性があり、場合によっては景品表示法に違反する可能性があります。
セールを行うこと自体は法令に違反するものではありませんが、キャンペーンの内容や、広告の表現方法には、十分に留意をする必要があります。
事業の規模によっては、顧問弁護士と契約して、キャンペーンのたびにレビューしてもらうほどまではいかなくとも、広告規制の基本知識に留意し、いざとなったらレビューをしてもらえる法律の専門家と繋がっておくと安心です。