民泊を開業しよう!

こんにちは、行政書士の白井豪祐です。

外国人旅行客が徐々に増えるようになり、東京近郊の宿泊施設は予約が取りづらくなりました。

東京近郊地域は、観光需要に対して客室数が多いとは言い難く、宿泊価格が高騰しています。このような中、今後も需要が伸びそうなビジネスとして注目されているのが、民泊の営業です。

法改正等により、参入障壁が低くなったこともあり、個人で始める方も増えてきました。特に2023年以降は、「民泊バブル」といっても過言ではないほど、弊所にも民泊に関するご相談、・依頼が増えており、弊所だけでも、既に30件以上の民泊申請を担当させていただきました。

今回のコラムでは、そもそも民泊は儲かるのか?その民泊開業にあたり確認しておきたい要件やポイントについて解説していきます。

民泊は儲かるか?

そもそも民泊は儲かるのか?ということは、弊所にご相談いただいた方々に必ずいただく質問ですので、先回りして回答させていただきます。

結論から申し上げると、一定のノウハウがあり、事前に専門家の助言を受けた上で正しく運営をすることができれば、粗利が高く、非常に収益化しやすいです。

民泊として営業する物件を新規で取得するか、既に持っている物件を活用して始めるかによっても異なりますが、特に後者の場合は、初期投資額が非常に少ないため、コンセプトを決めた上で適切に集客・運営することができれば、早期に収益化が可能です。

宿泊業の最大の長所は、飲食や酒類販売等の他のサービスと組み合わせやすいことです。

民泊の最大の欠点が、民泊新法に基づいて営業する場合、最大180日という営業日数がネックとなり得ます。しかし、宿泊事業は立地によって繁忙期と閑散期が明確に分かれる業種ですので、需要が高い日を稼働させ、需要が低い日を稼働させないことにより、日々発生する人件費等のコストを下げることができます。

稼働する日と稼働させない日をいつにするか、1室あたりの単価をいくらに設定するか、高めの価格設定でも予約が入るようにするために、どのようなコンセプトにするかで、売上は大きく左右されますし、運営者の腕の見せ所でもあります。

旅館業との比較

民泊とよく比較対象になるのが旅館業の許認可ですが、必ずしも旅館業が有利とは限りません。なぜなら、旅館業は許認可の取得そのものが民泊よりも難しく、各法令に適合させようとすると、一定程度初期投資額が発生し、投資額回収まで時間がかかります。

毎日運営するとなると、自分自身だけで全営業日を稼働することは現実問題として難しいですから、スタッフを雇ったり、一部アウトソーシングしたりしますが、空室が発生しても、これらがコストとして発生するため、利益額が減る場合もあります。

少ない物件数、部屋数で行う場合は、民泊の方が低コストで効率的で、旅館業や中上級者向けといえるでしょう。民泊営業初心者の方は、開業当面は民泊の営業で1年程度経験を積み、運営に慣れてきたら旅館業に格上げや、別物件での営業を検討するのが良いでしょう。

収益に影響する様々な要因

特に首都圏は、外国人インバウンド需要が高いという点で非常に魅力的です。以下は、民泊事業の収益性に関連する要因として考慮すべき点です。担当の行政書士と打ち合わせをしながら書面にまとめておくと、各種補助金の申請や、融資を受ける際に非常に役立ちます。

1 市場分析

開業予定場所は、十分な事前調査と市場分析が重要です。特に人気のエリアや観光スポット周辺での需要を把握し、それに基づいて物件の選定を行いましょう。

2 予算

外国人向けの魅力的な宿泊施設を提供するためには、初期投資が必要です。内装や設備にこだわり、清潔で快適な空間を提供することが大切です。一方でランニングコストも考慮し、予算を適切に設定する必要があります。

3 立地と物件の設備

物件の立地や設備・品質が収益に大きな影響を与えます。アクセスが良く、清潔で魅力的な物件は、高い利用率と価格設定が可能です。
不動産資産を持っていない場合でも、貸し出すことのできる低コストな物件を見つけることが重要です。
アパートやマンションなどが一般的ですが、借りる前に、規制への抵触や、建物の利用制限にも注意が必要です。この点を十分に検討されておらず、民泊開業を断念してしまう方も一定数いらっしゃいますので、十分な事前準備が必要です。

4 法令遵守と許認可

東京都近辺は、条例等で規制が加わることがありますので、法令遵守には十分な注意が必要です。行政書士や不動産会社、各行政庁とも事前にと相談し、法的リスクを最小限に抑えましょう。

ここまでのまとめ

総じて、民泊事業は成功するためには慎重な計画と地道な努力が必要です。需要の高い地域で魅力的な物件を提供し、法的要件を遵守しながら効果的な運営を行うことで、収益性が向上します。リスク管理やマーケットの変動にも注意を払いながら事業を展開することが重要です。

民泊の許認可取得方法

次に、具体的な民泊の営業方法についてお話しします。2023年10月現在、「民泊」の厳格な定義は実は存在しないのですが、民泊の営業方法は大きく分けて3つあります。

  • 旅館業法に基づくもの
  • 住宅宿泊業法(民泊新法)に基づくもの
  • 国家戦略特別区域法に基づくもの

もし民泊としての営業日数を年間180日以上で考えている場合は、旅館業に基づく許可の取得が必要になってきます。旅館業法に基づく申請については、別ページにて説明させていただきます。

また、国家戦略特別区域法に基づく申請は事例としては少ないため、本コラムでは割愛させていただきます。

住宅宿泊業法(民泊新法)に基づく民泊

住宅宿泊事業法に基づく民泊を始めるためには、届出が必要になってきます。先述の通り、民泊新法にもとづく営業は年間180日以下にしなければいけません。

この営業形態で行うで気を付けるべき点は、大きく次の3つです。

  • 消防法における規制
  • 施設の設備、居住要件
  • 家主居住型か家主非居住型か

消防法における規制について

旅館業法の時と同じように、消化設備の設置が義務付けられています。消火器、屋内消火栓設備、どのような設備が必要かは建物ごとにより異なります。また警報設備、避難設備等も同様に必要になってきます。

施設の設備、居住要件について

届出を行う予定の施設の設備は、「台所」「浴室」「便所」「洗面設備」の設置が必須となってきます。それぞれが独立してなくても、ユニットバス等も良いとされています。

居住要件としては

  • 現に人の生活の本拠として使用されている家屋
  • 入居者の募集が行われている家屋
  • 随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋

があります。

家主居住型か家主非居住型かについて

この家主居住型か家主非居住型かどういった基準で判別されるのでしょうか。それは民泊施設に1時間から2時間程度不在の時間が生じれば家主非居住型に判別されます。

この家主非居住型にあてはまると宿泊管理業務を外部に委託する必要がでてきます。また必要な消防設備が家主居住型と異なる部分がでてくるので確認が必要になってきます。

民泊のための許認可の申請を行政書士に依頼することのメリット

民泊事業を始めるには、許認可の申請が必要であり、その手続を効果的に進めるために行政書士等の専門家に依頼することが一般的です。行政書士に許認可申請を代行してもらうメリットを大きく4つ挙げさせていただきます。

1 迅速な手続が期待できる

民泊事業は、地方自治体の規制に従う必要こともあり、その地域の法的要件や手続についての専門知識が必要です。民泊の申請経験がある行政書士に依頼することで、迅速な申請手続が期待できます。また、飲食や酒類販売等の付随サービスを提供する場合に、どのような許認可を取得するのかが期待できます。

2 法令遵守とリスク回避

将来的な法的リスクを最小限に抑え、事業の安定性が確保されます。法的なトラブルや違反リスクを回避するために、行政書士の専門知識は不可欠です。

3 行政書士がもつネットワークの活用

行政書士は通常、地元の行政機関との良好な関係を有しています。民泊の許認可に関する問題や疑義が生じた場合、円滑に解決できるでしょう。また、会計や登記等で他の士業とコミュニケーションを取りたい場合は、必要に応じて専門家を紹介してくれます。

4 継続的なサポートと法改正情報の提供

行政書士は単なる書類提出だけでなく、補助金や融資、広告戦略といったアドバイスの提供も期待できます。単に民泊の許認可を得るだけでなく、許認可取得後も、様々な場面での助言が期待できます。
また、法律の専門家である行政書士は、法改正の情報収集を日頃から行なっており、常に最新の情報を提供します。法改正に素早く対応することで、事業の持続可能性が向上します。

以上のように、地域の法的要件やビジネス環境に通じた専門家の協力は、事業の円滑なスタートと継続的な成功に向けて有益だと言えるでしょう。

よくある質問

1 行政書士と司法書士の違いはなんですか?

担当する業務領域が異なります。

行政書士 法人設立の事前相談や、契約書作成、行政とのやりとりに関する手続全般を行います

司法書士 商業登記や不動産登記、相続や後見の場面で活躍することもあります

2 行政書士の強みはなんですか?

契約書作成や行政手続を得意としていることが最大の強みとしており、ビジネス推進やトラブルを防ぐための回避方法を指南してくれることが多いのが特徴です。

先述の通り、行政書士は職務柄様々な他の専門家と繋がっているため、行政書士に相談を行い、適切な専門家(弁護士、司法書士、税理士、社会保険労務士等)を紹介してもらうことが期待できます。

行政書士にも様々な業務領域があり、遺言・相続や許認可、外国人出入国を専門としている行政書士等、様々です。

3 おすすめの書籍はありますか?

服部 真和著「民泊ビジネス運営のための住宅宿泊事業法と旅館業法のしくみと手続き」が非常にわかりやすくまとまっています。

まとめ

これまで、様々な民泊施設の開業に関与させていただきましたが、民泊は日本人より外国人の利用が多いのが一般的です。

日本人はブランド力があるホテルに泊まりたい傾向がありますが、外国人は民泊利用そのものに慣れていることが多く、ホテルではなく、「その国ならではの宿泊施設に泊まりたい」というニーズが強いです。

多少高くても、近隣宿泊施設では提供できない独自のサービスがあれば、単価が高くても空室は発生しにくいのが特徴です。

民泊で旅館業の運営に慣れてきたら、簡易宿泊施設の開設も挑戦も検討してみください。

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