こんにちは。行政書士の中田 茉以子です。
参入障壁が低く、料理の腕一本で勝負でき、生活に必須のお店といえば、真っ先に思い浮かぶのは「飲食店」ではないでしょうか。
飲食店を開業する際には、必ず都道府県知事又は政令市・中核市の市長の許可を得なければならず、当該事務を取り扱う出先機関は保健所となります。
本コラムでは、飲食店の開業に必要な保健所での手続きについてご紹介します
【手続き①】事前相談
営業許可の申請に先立って、必ず行政書士及び保健所に事前相談を行いましょう。
というのも、事前相談で図面に問題がないことを確認せずに工事を行った場合、施設検査で不合格となったときには追加工事が必要となるからです。
追加工事となった場合、費用が余分にかかるだけでなく、開業日もずれ込んでしまいます。
工事業者は営業許可の細かい基準まで把握しているとは限りませんので、事前の「根回し」は重要です。
なお、この事前相談は保健所によっては「必須」とされており、事実上の申請手続きの第一段階となっています。
【手続き②】営業許可申請
工事が完了したら、営業許可申請を提出しましょう。
営業許可申請に必要な書類は次のとおりです
・飲食店営業許可申請書
食品衛生法(第55条第1項・第57条第1項)の規定に基づき、必要とされている項目について、各自治体が条例で定めている様式に記入する必要があります。
・場所の見取り図
お店の所在地がわかる地図のことです。
最寄り駅や目印となる建物などを入れ、後述の施設検査時に検査職員が訪問しやすいよう留意しましょう。
・営業設備の大要・配置図
営業設備の大要とは、店舗内設備の概要や配置をリスト化したものであり、各自治体が定めた様式に記入する必要があります。
・内装の配置の平面図
内装の配置の平面図とは、お店の厨房と客席の配置などを記載するものです。
各自治体が定めた様式に記入する必要があり、営業設備の大要・配置図の裏面となっていることが多いようです。
・水質検査成績書(貯水槽や井戸水を利用する場合)
水道水を直接使用する場合は不要ですが、ビルなどで貯水槽を使用するときは、水質検査成績書を提出する必要があり、事前の検査が必要です。
・登記事項証明書
法人が申請するときには必要となります。
・食品衛生責任者の資格を証明する書類
飲食店の営業許可を得るためには、食品衛生責任者の設置が必要です。
調理師免許の保有のほか、「食品衛生責任者要請講習会」の修了で、任用資格を満たすことができます。
【手続き③】施設検査
いよいよ、開業までの大詰めの段階となりました。
最後の関門が、施設検査です。
保健所の職員が現地に立入り、許可要件を満たしているか検査を行います。
飲食店の場合、次の点がポイントとなります。
・照明
100ルクス以上の明るさがある
・厨房内
二槽シンクである
食器棚が扉付きである
窓に網戸がある
ゴミ箱は蓋付である
床や壁が掃除しやすい素材である
・冷蔵庫
厨房内に設置されている
温度計がついている
・トイレ
手洗い場が設置されている
・その他
厨房と客席を隔てる仕切りがある
施設検査が終了し、問題がなければ、営業許可証が交付されます。
なお、営業許可証には所定の有効期限があり、更新時には再度、施設検査が行われます。
また、その間に法改正が行われたときは、経過措置が設けられることもありますが、設備の更新等が必要となることもあります。
まとめ
今回のコラムでは、複雑な飲食店の開業手続きについて許認可の提出先に分類してご紹介しました。
東京深川行政書士事務所では、保健所で食品衛生法に基づく営業許可の審査の実務を行っている「食品衛生監視員」の任用資格(薬剤師)を持つ行政書士が在籍し、プロの視点からサポートを行っておりますので、お気軽にご相談ください。