医療法人設立

はじめに

こんにちは。東京都江東区で運営しております、東京深川行政書士事務所です。

最近、医療法人設立に関するお問い合わせが増えております。

本ページでは、医療法人に関する基本的な知識について、解説いたします。

医療に関する法人の種類

医療法人には、現存しないものも含めて様々な種別や区分が存在します。医療法人の種別や区分につき、簡単に説明いたします。

社団法人と財団法人

すべての法人は、「社団法人」と「財団法人」に大別されます。 「社団法人」とは、「一定目的のために結合した人の集団を基礎として作られる法人」、「財団法人」とは「一定目的のために提供された財産を運用するために作られる法人」とされ、それぞれの目的によって、営利法人と非営利法人が存在します。

「社団法人」の中で営利を目的とするものの代表が、いわゆる「会社」ということになります。

一方で、営利を目的としない社団法人としては、「公益社団法人」の他、「労働組合」等の中間的社団法人も存在し、「医療法人社団」もここに分類されます。

医療法人社団と医療法人財団

医療法人社団

複数の自然人が集まり、現金、不動産、医療機器等一定の財産を拠出した団体が都道知事の認可を受け、登記されることにより成立する医療法人形態であり、現在の主流です。

医療法人財団

個人または法人が現金や医療機器といった一定の財産を無償で寄附し、医療施設等の機関を持つことで都道府県知事の認可を受け、登記されることにより成立する医療法人形態です。現在、新たに設立されることは非常に稀な形態です。

医療法人化のタイミング

個人開業の診療所を経営されている医師の方々から、「売上がいくらぐらいになったら医療法人にしたほうが良いでしょうか?」と質問をいただくことがあります。

医療法人を考えるのであれば、売上より事業所得の金額で考えるほうが良いでしょう。弊所では、700万円から1,200万円を一つの目安としてご案内しております。

節税という点だけを考えるのであれば、個人開業より医療法人のほうが有利な点が多いです。

所得税は超過累進税率に対し、法人税は段階税率です。このため個人開業は所得が高くなるほど、医療法人より税金の負担が重くなります。

医療法人はたとえ赤字であっても均等割を負担する必要がありますが、個人開業は赤字の場合は税金を負担する必要がありません。

税率の差から、所得金額が高くなればなるほど、一般的には個人開業より医療法人のほうが節税効果は高くなります。

ただし、節税だけを目的に医療法人を設立する場合、後になって「こんなはずではなかった」と思う場合もあります。

法人化した場合の変化は多数ありますが、その中でも必ず押さえておきたい点について、説明いたします。

1 経費

個人開業は、売上に直接関係がある費用しか経費にすることができません。

例えば、個人名義の車両の減価償却費やガソリン代を100%経費にしていると、大抵の場合は税務調査で自家使用部分が問題になります。

一方、医療法人の場合、往診車等の法人で使用する車両については、自家使用部分が問題になることはまずありません。

その他、事業主が居住するための家賃の支払いを経費にすることはできませんが、医療法人の場合は、支払った家賃のうち一定の金額を役員社宅として経費にすることができる場合があります。

一般的に医療法人のほうが個人開業より経費枠が広いといえます。

2 事業拡大性

個人開設の医療機関は、医師個人が管理者になるため、原則として1か所しか医療機関を開設することができません。

一方、医療法人は法人が開設者になるので、1か所だけではなく複数の医療機関を開設することができます。

また、介護事業のうち「居宅療養管理指導」「訪問看護」「訪問リハビリテーション」の3事業は、個人開設の診療所でもできますが、これ以外の「介護老人保健施設」「訪問看護ステーション」「通所介護」「有料老人ホーム」等の事業は法人格があることが指定の要件になります。

このため、分院展開や介護事業への進出を考える場合は医療法人が前提になります。

事業を承継する場合は、医療法人が有利です。

個人のように廃止や開設をする必要はなく、理事長の地位を交代するだけで済みます。

新たに理事長になる人が理事でない場合は、まず社員総会で理事長就任予定者を理事に選任し、理事会で理事長に選出した後に法務局で理事長の登記を行います。

登記が完了したら、都道府県に「役員変更届」を提出すれば完了します。

医療機関の財産は、基本的に医療法人に帰属しますので、事業承継の際に医療機関が所有している財産の移転を個々に考える必要はありません。

事業の承継を考えるのであれば、医療法人が確実であるといえます。

3 所有財産の自由度

個人開業の場合は、医療機関の財産は経営者のものですから、いつでも自由に使うことができます。

一方、医療法人になると、法人にも人格がありますので、法人名義の財産はたとえ経営者といえども勝手に使うことができなくなります。

経営者は医療法人から給与をもらう給与所得者になり、給与の中から生活費を支払うことになります。

個人開業の時より自由に使える資金が減少し、資金の使い勝手は悪く点は留意事項です。

剰余金が法人に一旦蓄積されると、設備投費、退職金の支払等の大きな資金需要の発生がなければ法人内部に蓄積されたままです。

医療法人は一般の事業会社と異なり、非営利法人であるため、法人内部の剰余金を配当することで外部資金を流出させることができません。

その結果、利益が出ている法人ほど剰余金が法人内部に貯まっていく傾向にあります。

このように、税金や事業拡大という点では長所がありますが、財産の自由度が狭まるという短所があります。

医療法人を設立するまでの手続

医療法人を設立するための手続について、簡単にお話しいたします。

具体的に行政書士や司法書士がお手伝いするのは、ここからになります。

医師個人が開業する場合は、基本的に保健所や地方厚生局とのやり取りだけで済みますが、医療法人になると、保健所や地方厚生局の他に、事務所所在地の都道府県へ毎期所定の書類を提出する義務が生じます。

手続き運営面では、医療法人は都道府県の管理下に置かれますので、個人開業と比較すると、手続がどうしても煩雑になります。

会社法の適用を受ける準則主義の法人は、基本的にはいつでも法人の設立登記が可能ですが、医療法人は、都道府県から認可を受けたことの証である「認可書」の添付がないと法人として設立登記することができません。

許可書をもらうためには、都道府県へ設立認可申請書類を提出し、認可を受け付けてもらう必要があります。

設立認可申請書類は、多くの都道府県で年に1回から3回程度しか書類の受付を行っていません。

その上、申請書類を提出しても認可が下りるまでに大体6か月ぐらいの期間を要します。

提出書類も、役員就任予定者の履歴書をはじめ、印鑑証明書、設立総会議事録、医療機関の敷地平面図、建物の構造及び平面図、医療法人へ拠出する財産の目録、過去2年分の確定申告書等、都道府県が指定する様々な書類を提出しなければなりません。

つまり、医療法人を設立する場合、計画的に行う必要があります。

医療法人設立後の手続

医療法人設立後も、さまざまな手続が必要となります。

個人が開業中に診療時間や曜日、構造設備、診療所の名称や科目、管理者の変更があった場合は、保健所に届け出るのが原則で、特に変更がない場合は基本的に届け出る必要はありません。

医療法人は、届出手続以外にも、法務局へ「資産総額変更登記」をし、都道府県へ、「医療法人決算届」「医療法人登記事項変更届」の提出する義務があります。

また、役員の変更があった場合は「医療法人役員変更届」を遅滞なく提出しなければなりません。

まとめ

簡単ではありますが、医療法人とは何か、医療法人設立の長所や短所を説明いたしました。

医療法人の設立を考える場合、法人設立後のシミュレーションを事前に行うことが望ましいです。

いざシミュレーションをする場合、節税額だけをフォーカスする場合が多いように感じますが、可能であれば、可処分所得まで計算されることをおすすめします。

医療法人設立は、さまざまな費用や手続きが発生するため、必ずしも法人化することが最善とは限りませんので、事前に担当の行政書士と相談して、法人化するか検討する必要があります。

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