行政指導・行政処分の発動を求める手続について、現役行政書士が解説します

こんにちは。東京深川行政書士事務所です。

行政手続法に規定している「処分等の求め」は、誰でも、法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分又は行政指導がされていないと思料するときは、当該処分を求めることができます。

申出を受けた行政機関は、必要な調査を行い、その結果必要があると認めるときは、処分又は行政指導を行わなければなりません。

行政書士試験において、「処分等の求め」は非常に有名なテーマですが、実務で扱っている行政書士はかなり限られており、弊所では、行政指導や行政処分に関する手続ができることを一つの強みとしています。

弊所では、これまでに20件以上、行政指導や行政処分の発動を求める手続を行いましたが、かなり高い確率で、何らかの行政指導や行政処分が行われています。

本手続は、行政指導や行政処分の発動を求める手続を行なっても、その結果がどのようになったかについては、明確にフィードバックされないことが多いため、明確にどのような結果になったのかは、残念ながら知ることができません。

ただ、弊所が指摘した箇所がいずれも改善あるいは削除されたり、許認可の停止や処分がされているため、申請したほぼ全ての案件で、行政指導や行政処分がされたのではないかと推測しています。

本手続は、民事訴訟や刑事告訴と並行して行うケースも多く、事件の内容や規模次第では、行政書士や弁護士複数名で受任するケースもあります。

本ページは、行政指導や行政処分の発動を求める手続について、より詳細に説明させていただきます。

実務での使われ方

行政書士試験では、出題頻度が比較的高いテーマであるため、制度としては行政書士の間では非常に有名ですが、業務として行っている行政書士は非常に限られています。

では、弁護士であれば本手続を行うのかというと、あまり受任している法律事務所が存在しないのが実情です。

司法試験受験過程で「行政法」の試験科目はあるものの、主たる試験の範囲は行政行為や行政訴訟の内容で、大学等で専攻しない限り、行政手続法の条文を、行政試験対策ほど細かく学習しません。

また、予備試験「行政法」の短答式試験でも、殆ど出題実績がないため、弁護士によっては、制度そのものを知らないケースもありますし、そもそも弁護士で行政関係の事件を扱っている事務所が非常に限られています。

これらの手続は、「何人もできる」とされており、書面による申出であることから、実はとても利用しやすい制度であると私は考えていますし、もっと多くの人に知られ、利用されてもよい制度だと思っています。

各行政機関は、職員の数も限られておりますから、世の中の全ての法令違反を探知して処分や行政指導を行うことは、現実問題としてできません。

一方で、国民が安心して生活できる環境を整えるためには、法令違反を是正することもまた必要なことです。

特に近年では、景品表示法や派遣法、下請法に抵触した悪質な事例も多く、思わぬ場面で不利益を受けてしまうケースが少なくありません。

個人で決定的な証拠を揃えるのは限界がありますから、法令違反の証拠や事実を見つけるためのきっかけとなる役割が本制度であると、弊所は考えております。

このように、行政手続法に定められている本制度は、非常に広域な違反事実を取り扱うことができます。

個別法に対する違反の事実があり、その法律でそれに代わる手続きがある、あるいは排除されているなどの法令がなければ、「処分等の求め」は行うことができるとされています。

私見ですが、本制度が行政不服審査法ではなく、一般法行政手続法に定められたのは、本制度は「何人でも」申し出ることができる制度であり、「個人の権利利益の侵害」を要件とする行政不服審査とは異なるからではないかと考えています。

どのような場面でご依頼をいただくか

行政指導や行政処分の発動を求める手続を行なった件数は先述の通りですが、実際に行なった手続の倍以上の件数を、事前相談としていただいています。

ただ、費用対効果が見合わなかったり、「何らかの行政指導・処分がされるだろう」と心象が形成できるほどの証拠が揃わなかったといった事情で、実際に手続を進めなかった事案もあります。

個人で証拠を収集するのは限界があります。手続の時点で完全に証拠が揃っていなくても、担当者に丁寧に事情を説明することができれば、調査を進めてくれるケースが多いです。

しっかり書類を揃えれば、高い蓋然性をもってなんらかの行政指導・行政処分が発動するため、相手方に与えるダメージは非常に大きい手続です。

これらの手続は、どのような場面でお問い合わせいただくのでしょうか。

まず一番多いのは、退職者による内部告発で、「法令に明らかに違反する行為をやるように求められ、拒否をしたところ、不利益な扱い(解雇等)をされた」というものです。

特に、デザイナーやイラストレーターが景品表示法に明らかに反する広告の制作を求められたような事例です。

次に多いのが、ビジネスにおいて、同業他社が法令違反を行なっているのを知り、それが理由で自社の業績等に何らかの影響が出ている場合です。

例えば、クリーニング店が比較的密集している地域において、通常価格が1,000円とされているサービスについて、常に何らかの割引を行なっているような場合です。

定価が存在しているにも関わらず、実際に定価で販売されている期間がないような場合は、景品表示法違反にあたる可能性があります。

行政指導・行政処分を求める方法

行政指導や行政処分を求めるには、管轄する行政機関に対して、書面を提出して行います。

書式は特段決まりが無いですが、行政庁によっては、参考となる雛形や記載例を公開している場合もあります。

弊所の場合は、事案の内容により、コンパクトにまとめて面談時に補足することもあれば、刑事告訴や訴訟で提出するレベルに作り込む等、さまざまです。

工数も事案によって様々で、あからさまな違反の場合は、数時間で作成が完了しますが、悪質なケースにおいては、証拠書類が30点以上に及ぶこともあり、ほぼ1週間他の業務が一切できないこともあります。

特に、大きな金額が行う取引に関する法令違反は、経済的打撃が大きいこともあり、絶対に言い逃れできないよう念を入れて証拠書類を揃えることもあります。

書類提出時は、担当の窓口に直接持ち込んで提出することが殆どで、口頭でも補足して説明し、事案によっては、追加で書類を提出することもあります。

少し時間がかかることもありますが、明確に違反点を指摘することができれば、何らかの対応をしてくださることが殆どです。

「処分の求め」と「行政指導の求め」は一度に両方を求めることも可能です。

記載する内容は大きく以下の通りです。

  1. 法令に違反している事実
  2. 根拠となる条文
  3. 証拠資料

本制度は、非常に広域な違反事実を取り扱うことができるのは先述の通りですが、あくまで、「職権発動を促す制度」と位置付けられているに過ぎません。

この表れとして、申出人に、申出を受けた調査結果や是正措置について、通知を求める権利を与えておりません。

そのため、手続を求めた結果がどのようになったのかを、直接に知ることができませんし、実際に文書開示手続等も行ないましたが、いずれも全てグローマー拒否されております。

景品表示法違反の場合、三ヶ月から半年後に、指摘した広告やランディングページが無くなっていたり、その企業の広告表記が大幅に改善されているような場合は、「なんらかの指導を受けたのだな」と推測することができます。

このように、刑事告訴の場合、受理されれば必ず警察が動いてくれますが、処分、行政指導の求めは、刑事告訴ほどの強制力が無いことが大きな特徴です。

手続費用について

本ページをご覧いただく方の一番気になる点は、本手続の報酬額だと思います。

申出書は、作り込むと合計で50頁は超えますし、あからなさまな事案ではない限り、調査にも時間がかかります。また、相手に指導や処分を求める手続であり、申し立てられた相手方は、最悪の場合は廃業を余儀なくされてしまいます。このような事情から、書類作成に特に神経を使いますし、依頼者様にも、証拠収集や、面談等様々な形でお手伝いいただくことになります。

事案によって工数が全く異なり一概に言えませんが、税別15万円から50万円が一つの目安の金額となります。

  1. 証拠書類がどれだけ揃っているか、揃えられそうか
  2. 書類作成にどの程度工数がかかりそうか

の事情で受任金額を決めさせていただきます。

まとめ

本事務所では、行政指導や行政処分を求める書類の作成を行っております。

まずは、違反の事実が何か、違反の事実を裏付ける証拠が揃っているかを面談時に確認させていただきます。

実際に書類を作成した場合、行政指導や行政処分がされる可能性があるかも含め、面談時にフィードバックさせていただきますので、まずはお気軽にご相談ください。

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